「劇場版 深夜食堂」(松岡錠司監督)

 元祖飯テロ、街の片隅で夜0時から開く「めしや」で繰り広げられる物語。
 マスター(小林薫)が今回メインで作る料理は3つ。「ナポリタン」「とろろご飯」「カレーライス」で、それぞれ季節ごとに違う物語が語られます。


 とりあえず。


 おまわりさん(オダギリジョー)の匂いなど私もかぎたいわー!!!


 ……心の叫びでした。


 まあそれはともかく、TV版でおなじみの常連さんも総出演、テレビで見るのと変わらない世界がそこにありました。人が出会い、別れ、何かちょっとした傷が残ったり、温かいものが残ったり。飯島奈美さんの手がける料理も本当に美味しそうで。
 鈴木常吉さんの「思ひで」が大画面に流れるなんて、最初から見てきた人たちにとっては感涙ものじゃないのかな。
 春の「ナポリタン」は元愛人の女性とうだつのあがらないサラリーマンの恋と別れ。
 夏の「とろろご飯」は、お金がなくて「めしや」で食い逃げをしてしまった女の子が、マスターの厚意で住み込みで働かせてもらうことに。マスターの昼間の姿とか、お店の2階とか珍しいものが見れます。そしておまわりさんかっこいい。
 秋の「カレーライス」は震災ボランティアの女性と、彼女を追っかけて東京に来た被災者の男性の物語。筒井道隆さんとオダギリが一緒の画面にいると、「この人達殿と斉藤だよな」とついつい思い出してしまう。しかも筒井さんの役は福島から出て来た設定だし。
 1カットだけ普通に(何の説明もなく)向井理さんがお客として出てたけど、あれは一体何だったんだ。
 全編を貫く骨壷のエピソードの締めくくりに田中裕子さんが出てて、怪演なさってました。
 最後に雪が降り、一年がめぐる。一度めしやに行って、常連の皆さんと一緒にマスターの料理を味わいたいと思わせてくれる映画でした。