「渇き。」(中島哲也監督)

 妻の不倫相手に対する暴行事件を起こして警察をクビになった元刑事・藤島(役所広司)は、別れた妻・桐子(黒沢あすか)から、一人娘の加奈子(小松菜奈)が失踪したことを知らされる。加奈子の持ち物からは、覚醒剤が出て来た。
 加奈子の行方を探し始める藤島だが、行方を探るに連れ、優等生の美少女だった加奈子の裏の顔が浮かび上がって来る。
 一体、藤島加奈子とは何者なのか? そして彼女の行方は? そして、藤島の加奈子への思いは暴走し始める。


(以下、ネタバレあり)


 とにかく。
 役所広司さんはまるで獣のように突っ走った挙句行く先々でボコられたり撃たれたり刺されたりスタンガン食らったりして血まみれになるし、「仮面ライダー鎧武」のミッチこと高杉真宙君は腹かっさばかれた上に内蔵踏んづけられて血まみれになるし、オダギリジョーは教会で敬虔な祈りを捧げるマイホームパパかと思いきや狂犬のような男でやっぱり血まみれになるし、妻夫木聡さんはやたらヘラヘラした刑事で「こんな奴に逮捕されたくねえな」と思われつつ車にはねられて豪快に吹っ飛ぶ(これ、笑うとこだよね?)し、なんかもう一周回って痛快な気分になってくる映画でした。
 これ、「主人公に共感できない」って言葉をどっかで見たけど、当たり前じゃねーか共感なんてしなくていいよこれ。こんなのに共感できたらそっちのがおかしい。出て来る人ほぼ全員どっか人間としてタガが外れちゃってる人ばかりだし、加奈子に至っては一般的な理解すらきっぱり拒んでるキャラだしね。
 いや、マジで加奈子は「周りの人を破滅させずにはいられないわけわかんねー女」でいいんじゃないかと思うよ。私は。


 オダギリは冒頭で教会で祈りを捧げるところが出て来て、中盤にシルエットと声だけの登場で藤島を痛めつけ、最後に狂気の姿を見せて藤島と死闘を繰り広げる。写真だけでマイホームパパの姿も見れるし、オダギリヲタにとっては非常に美味しい映画でございました。


 しかし、これラストシーンが雪山なんで、思わず黒目アルティメット藤島と究極の闇をもたらす者加奈子が殴り合いで決着をつける終わりなんてのを妄想しそうになったりして。どっちも笑ってそうだけどな。